深きものども [Deep Ones]

クトゥルフ神話
スポンサーリンク

深きものども(ふかきものども、英語:Deep Ones、ディープ・ワンズ)とは、クトゥルフ神話作品に登場する架空の生物である。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説『インスマスの影(The Shadow Over Innsmouth)』で初登場したが、先行作品『ダゴン』において存在が暗示されて来た半人半魚の生物、亜人である。ほぼ人型で脚を持って二足歩行が出来、鰓があり海中や海底都市で生活している。知能も人間と同程度で、人間と交配もできる。混血した個体は、成長によって姿が変化する不完全変態を行う。

英語ではDeep ones(深きものども)と、複数形が種族名となるが、本項では以下「深き者」と表記する。

主に『インスマスの影』の描写から解説する。

ゾス星系から地球に飛来した旧支配者クトゥルフの眷属(奉仕種族)。彼らの長である父なるダゴンと母なるヒュドラと海底に沈んだ古代都市ルルイエに封印されたクトゥルフに奉仕するために活動する。彼らは、主に海底で生活している。その理由は、あらゆる水棲動物の支配者、大いなるクトゥルフを崇拝すると同時に彼に仕え、必要とあらば、どんな用向きにもすぐに応じるためである。この信仰は、「ダゴン秘密教団」と言われ組織化されている。

生物的特徴
まず、ほぼ人間と同じ体型をしている。人間との差異として表情は、ほとんど変化せず、眼窩から大きく隆起した眼球のため瞼が下がらず、まばたきできない。多くは、二足歩行が可能だが、四つん這いでなければ歩行できない個体もいる。歩き方は、ガニ股で身体を左右に振り、頭を上下させ、カエルのようにピョコピョコと跳ねるように行う。頭部や顔の様子は、魚かカエル、主に水棲生物に似た姿である。鼻や耳は、低く広がり目立たない。頭髪はない。肌は、鮫肌のようにザラザラ、ゴワゴワした状態になり、カサブタのような質感になる。肌の色は、薄灰色、青白い色、薄い緑色、暗緑色などである。特に腹部は、魚やカエルをモチーフとし、白くぬめぬめと光沢があって輝いている。対する背中には、魚鱗があり背鰭がある。臀部・尾骨辺りから魚の尾びれやサンショウウオのような尻尾が生えている個体もいる。首には、肉の垂れ下がったシワのような状態が出来、肩とアゴの間が完全に埋まって、この間に鰓がある。手足の指の間には、水かきのようなものがある。唸るような鳴き声で会話する。老化で死ぬ事が無く、暴力的手段、外的要因でしか命を落とす事がない。

これらの醜い容姿、歩き方、話し方により近隣の住民からは、酷く嫌われており彼らの住むインスマスに近寄るものは、殆どいないとされる。ただしインスマスでも昼間から深き者が歩き回っている訳ではなく、あくまで彼らも深き者に変化していく途中の住民たちである。

なおラヴクラフトは、性的な言及を避ける傾向にある為、外性器および性行為の様子に関しては、不明である[1]。また黒人[2]、黄色人種と混血した深き者も『インスマスの影』で言及されない為、明らかになっていない。

次に人間と深き者が交配して生まれる混血の個体は、生まれてから一定の期間は、全く人間と同じ姿で成長する。ただしある程度、親の形質をはじめから表している個体もいるようである。その後、同族との接触あるいは、過度のストレスなどによって「インスマス面」と呼ばれる深きもの特有の顔に近づいて行く。ただし、この速度や変化の現れる順番は、個体差が大きく一概に断言できない。また『インスマスの影』でも深き者としての形質を表すことなく人間と同じように老衰によって死亡する個体も描写された為、外部からの刺激が必要不可欠な要素であることは、断定できる。

隔世遺伝のような現象を起こす個体もおり、親が深き者に変化していない場合でも当人は、深き者になる場合がある。ここから一度、深き者と混血した人間の子孫は、上記の条件により変態が発生する可能性から逃れ得ないと推察できる。

深き者の長ダゴンは、深き者の太古から生きる長老あるいは、全く別の生物とされている。これは、深き者が人間と同じ大きさであるのに対し、ダゴンが数十mは、下らない巨体だからである。もし経年により巨大化するのであれば、大型個体が他にも登場しなければならないと指摘されている。またダゴンは、深き者と違い、マーメイドのように下半身が魚になっているとも言われる。

ただし、クトゥルフ神話の設定は、作家の自由に委ねられており、ダゴンと深き者の関係性も絶対とするものはない。

ダゴン(Dagon)は、古代メソポタミアの神がモチーフとされ、対するその配偶者ハイドラ(Hydra)は、ギリシア神話の怪物である。他にハイドラのイメージにヘンリー・カットナーの小説『ハイドラ(1939年)』が取り上げられることもある。この二人は、深き者にとってクトゥルフと加えて三位一体の神として崇拝されている。

普段、多くの時間を海中で生活している深き者だが人間同様、衣類や帽子などを身に着けている様子が『インスマスの影』で描写されている。また家族に愛情を抱いている様子、特に混血の個体の場合、自分と同じように深き者の形質が強く現れた相手を同族として親近感を感じる様子が描写されている[3]。さらに何世代も、何万歳も離れた個体同士でも親族は、親しくしている[4]。全く混血していない人間とお互いに尊重し合って同じ場所で生活している様子[5]もあり、クトゥルフ神話の多くの他の生物や種族のように凶暴化したり食人の性質[6]を種族全体が共有している点も見られない。このように幾つかの点を勘案すると人間と精神的な価値観は、同じと思われる。

彼らは、クトゥルフに奉仕することを宗教上の理想・目的としている。これは、深き者が種族全体で共有する価値観である。ダゴン秘密教団は、この目的のために組織された。まず奉仕者を増やし、将来的な敵を取り除くため人間を味方に着ける行動を取っている。この方法として金に似た金属で作られた奇妙な宝飾品や魚の大漁を約束し、見返りに人間との交配を契約させている。次にクトゥルフの存在を敵となる勢力から隠す必要がある。このため不用意に自分たちについて知られると危険を回避するために行動する。協力関係にあったオーベッド船長がインスマスの住民に拘束されると上陸して彼を解放している。深き者の存在について暗示したとされる『ダゴン』でも最後の場面で目撃者に対する追討が行われたことが仄めかされた。インスマスに立ち寄った住民が行方不明になるのも、このためである。

海底都市イハ=ントレイ
「イハ=ントレイ」(Y’ha-nthlei)ないし「イハ=ンスレイ」は、ラヴクラフトによって著された唯一の深き者の海底都市である。この都市は、北米大陸アメリカ合衆国ニューイングランドマサチューセッツ州エセックス郡のニューベリーポートからアーカムへ向かう街道の途中、マニューゼット川の河口にある港町インスマスの海岸から約1マイル半(約2.4km)沖にある悪魔の岩礁の下に位置する。1927年に海軍とFBIの共同作戦により潜水艦の魚雷あるいは、艦船からの爆雷によって破壊されたとされている。

この名前は、ラヴクラフトがダンセイニのキャラクター「Yoharneth-Lahai」からアイディアを得たとも言われる。

他の作者は、北大西洋上のトゥーレ(Thule 、アイスランドの火山島スルツェイ)とアルビオン(Albion 、コンウォール海岸)沖の中間に「G’ll-Hoo」と「Ahu-Y’hloa」を設定した。この位置は、ラヴクラフトと違い伝説の地名を結んだ場所が基準になっている。

アンダース・ファーガー(Anders Fager)は、ストックホルム沖の岩礁の中に「Ya’Dich-Gho」を設定した。1982年


ラヴクラフトの初期設定の頃から、混血による地上侵略を妨げようとする者は敵となる。後にクトゥルフ神話大系が成立して以降は、クトゥルフ復活を妨げる者も敵となる。主クトゥルフとハスターの対立から、陣営同士の対立もある(四大霊の水に属し、風と敵対するとも)。

生物として、海から離れることを嫌う。炎で焼き殺されることも多い。また「旧神の護り石」のパワーを嫌い、接触を避けようとする。

Source

深きものども - Wikipedia

コメント

タイトルとURLをコピーしました