(英: Yog-Sothoth)
クトゥルフ神話に登場する架空の神。
「無形の怪物」「全にして一、一にして全なる者」など複数の呼び名がある。
概要
H.P.ラヴクラフトの作品に登場する存在。
「存在」ではなく「空虚」(void)と表現される場合もある。
時空間の制限を一切受けない最強の神格にして、「外なる神」の副王とされる。
『銀の鍵の門を越えて』ではヨグ=ソトースに関して、「始まりも終わりもない。」とされ、「かつてあり、いまあり、将来あると人間が考えるものはすべて、同時に存在するのだ。」ともされている。
ランドルフ・カーターが出会った際には、以下のように描写されている。
それこそ果てのない存在と自己の<一にして全>、<全にして一>の状態にほかならなかった。単に一つの時空連続体に属するものではなく、存在の全的な無限の領域―制限をもたず空想も数学もともに凌駕する最果の絶対領域―その窮極的な生気汪溢する本質に結びつくものだった。おそらく地球のある種の秘密教団がヨグ=ソトースと囁いていたものがそれだろう。これは他の名前を数多くもつ神性であり、ユゴス星の甲殻種族が<彼方なるもの>として崇拝し、渦状銀河の薄靄めいた頭脳が表現しようのない印でもって知っている神性である―しかしカーターは瞬時のうちに、こうした考えがいかに浅薄皮相なものであるかを悟った。
— (『ラヴクラフト全集 6』、134頁より)
森瀬繚の『図解 クトゥルフ神話』によると、ヨグ=ソトースは時間と空間の法則を超越しており、全ての時と共に存在し、あらゆる空間に接しているという。「ひとつにして全てのもの」「全てにしてひとつのもの」ともいう。
過去・現在・未来はヨグ=ソトースの中で一つであり、全存在(「外なる神」や旧支配者すらも)がヨグ=ソトースに含まれている。ヨグ=ソトースこそが全情報を最大漏らさず記録している「アカシャ年代記」ともいわれる。
この神は一つの概念であると同時に、手で触れられない「ヨグ=ソトースという現象」でもある。
- 「人間であり非人間であり、脊椎動物であり無脊椎動物であり、意識をもつこともありもたないこともあり、動物であり植物
- 「カーターが自分であることを知っている存在」
- 「カーター自身の原型」
- 「時間と空間を超越するただ一つの窮極的かつ永遠の<カーター>」
- 「まだ生まれてもいない未来の世界におけるランドルフ・カーターと呼ばれる不条理かつ法外な種族の実体」
- 「幼年期の夢で見た魅惑つきせぬ領域」
- 「惑星ヤディスの魔道士ズカウバが繰返し連続して見る夢」
- 「地球はおろか太陽系において知られざるものの囀りや呟きに似た音」
- 「局所性、自己一体感、無限性とが組み合わさった空恐ろしい想念」
- 「力の渦動」
- 「存在、大きさ、範囲という概念のことごとくを超越するもの」
- 「原型的な無限の目眩く到達不可能な高み」
- 「不変かつ無限である現実」
- 「ただ一つの原型的かつ永遠の存在」
- 「<窮極の原型>」
- 「深淵と全能の<実体>」
- 「口にするのもはばかれるほど神聖な存在」
- 「インドの寺院に彫りこまれた手足と頭を多数備える彫像」
- 「<真実の人>」
- 「<彼のもの>」
- 「<そのもの>」(IT)
とも表現されている。
外見
無定形の怪物とされる。
顕現の際、その姿は絶えず形や大きさを変える虹色の輝く球の集積として現れ、互いに接近したり離れたりしている。この球体に触れると火脹れ、組織の乾燥、骨の露出を起こす。
時空間の底の底、混沌の只中で永遠に泡立ち続けており触覚があるが、その装いは一つ一つが太陽のように強烈な光を放つ玉虫色の球体の集積物であるという。
銀の鍵が開く、「窮極の門」を超えた場所に座すというヨグ=ソトースは実体を備えた神性であり、かつてウェイトリー家の女性との間に子をなしたことすらあったという。ジョン・ディーや初代ランドルフ・カーターといったエリザベス朝の魔術師達は、ヨグ=ソトースを手に入れることで神の座に到達できるとすら考えていたとされる。
呪文
死者を復活させる呪文が登場している。
Y’AI’NG’NGAH
YOG-SOTHOTH
H’EE-L’GEB
F’AI THRODOG
UAAAHH
これに対応するのが死者を元の塩に戻す呪文である。
OGTHROD AI’F
GEB’L-EE’H
YOG-SOTHOTH
‘NGAH’NG AI’Y
ZHRO
『ネクロノミコン(死霊秘法)』では、「外なる神」が住まう外宇宙への門こそヨグ=ソトースであるが、門の鍵にして守護者であり、宇宙の秘密そのものともされている。この門を開くための呪文は『ネクロノミコン』に記されているが、17世紀刊行のラテン語版以外の版では肝心の部分が抜け落ちてしまっているという。
「ユゴスよりのもの」はヨグ=ソトースを「彼方のもの」と呼んで崇拝しており、プロヴィデンスの黒魔術師ジョゼフ・カーウィンはヨグ=ソトース召喚の呪文を編み出し、これを唱えて彼の者の顔を見たとされる。
ヨグ=ソトースへ至る順序
以下はヨグ=ソトースへ至る順序の要約。ヨグ=ソトースを目指す者はウムル・アト=タウィルに案内を受けつつ、「第一の門」から「窮極の門」へ向かうとされている。
- 「第一の門」にて、「窮極の門」へ行く意思確認が行われる。
- 異形のものが六角形の台座で低い音を発し、輝く球体により体を揺らしリズムを取っている。
- 眠りに落ちる異形のものの夢により、「窮極の門」が物質的に顕在化する。
- 計り知れない深みに投げ入れられ、「窮極の門」へ至る障害である、バラの香りのする海に漂う。
- 海の先に「窮極の門」の巨大な石組のアーチが見える。
- 儀式に従って「銀の鍵」を動かし、呪文を詠唱して前方へと漂い続ける。
- 「窮極の門」を抜ける。
その他
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』(1927年)において初めて名前が言及されるが、特に重大に扱われているのは『ダニッチの怪』(1929年)である。その他、ラヴクラフトの作品においては、『銀の鍵の門を越えて』(1933年)などに登場する。
オーガスト・ダーレスによって体系化されたクトゥルフ神話において人間に害をなすと位置付けられた旧支配者、外なる神の一柱である。ヨグ=ソトースは、時空連続体の外側、全てに隣接するがどこにも行けない場所に追いやられている。また外世界にいるものは、「銀の鍵」を使ってヨグ=ソトースを通過せねばならないとされている。
呼称
旧支配者の名前を正しく発声すると危険が迫る、または、人間ではない彼らの名前は、正確に発音できないとされる。そのためいくつかの呼び名がある。
- ヨグ=ソトホート
- ヨグ・ソトト
- ヨグ・ソトホース
別名と称号
- 門にして鍵(The Key and the Gate)
- 全にして一、一にして全なる者(The All-in-One, The One-in-All)
- 彼方の者(The Beyond One)
- Opener of the Way
- 外なる神
- 混沌の媒介
- 原初の言葉の外的表れ
- 虚空の門
- 「漆黒の闇に永遠に幽閉されるものの外的な知性」
- 「あらゆる大地、あらゆる宇宙、あらゆる物質を超越する、<最極の空虚>」
- 「無」
- 「限りのない空虚」[(Infinite Void)
ウムル・アト=タウィル 窮極の門の番人
ヨグ=ソトースの化身にして使者である邪神。
ヴェールを纏った人間の半分ほどの大きさで、人間の形に見えるだけで人型ではない。
時空を超える事のできる「銀の鍵」を持つ者に現れ門へ導く。
「門」を通ることで次元を超えて存在する彼へと謁見することが可能になる。
この化身は「案内者」「窮極の門の守護者」「生命長き者」「最古なる者」とも呼ばれる。
他の神との関係
ヨグ=ソトースをはじめ神々の系譜については、ラヴクラフトが友人に宛てた手紙で冗談めかして語っている。それによるとアザトースの生み出した「無名の霧(Nameless Mist)」からヨグ=ソトースは、生まれたとされる。リン・カーターによればクトゥルー、ハスター、ヴルトゥームは、ヨグ=ソトースの息子とされる。またシュブ=ニグラスの夫とされ、ナグ (Nug) とイェブ (Yeb) をもうけたともされている。さらに『ダンウィッチの怪』では、ラヴィニア・ウェイトリーとの間にウィルバーと名もない弟の双子の混血児を作っている。他にツァトゥグアが孫にあたるとするものもある。
ステータス
- STR 該当せず
- CON 400
- SIZ さまざま
- INT 40
- POW 100
- DEX 1
- 移動 100
- 耐久力 400
- ダメボ なし
武器
球体のタッチ 100% ダメージCON 1D6 ポイントを永久的に失う
銀色の珠 80% 直径5m以内に死のダメージ
装甲
なし。ただしダメージを与えることができるのは、魔術的な武器だけである。
呪文
望む呪文すべて
正気度喪失
球体の球の彼を見た場合に失う正気度ポイントは1D10/1D100、タウィル・アト=ウムルの姿の彼の姿を見た場合には正気度は失わない。
登場シナリオ
繰り返す夢
プレイ時間:2時間30分~4時間