赤い竜

ウェールズの伝承

 

ウェールズ語でY Ddraig Goch

 

 

　ブリテンの大君主ヴォーティガン（ウルティゲルヌス）はサクソン人傭兵の反乱によりウェールズ方面に退却。その後魔術師たちの助言を受けて堅固な塔を建設しようとしていた。

　しかし塔を築こうとしても基礎が一夜にて地中に沈んでしまう。

　そこで王は再び魔術師たちに相談すると、生まれつき父親のいない少年を探し出してその血を礎石のモルタルを混ぜると良いと助言を受ける。

 

　ヴォーティガンは夢魔を父にもつ少年マーリン（メルリヌス）が生贄として見出される。事情を説明すると（殺そうとしていた訳ではない）少年は「魔術師たちを呼んで来てください、彼らの嘘を証明致しましょう」と言った。

「王様、土を掘り起こすよう工人たちに命じて下さい、そうすれば塔の基礎の地下に水たまりが見つかるでしょう、そのせいで基礎が沈んでしまうのです」

　と、告げられ半信半疑のまま基礎を掘らせた。

 

　すると少年の言う通り水たまりが出てきた。

　魔術師たちに「嘘の上手なおべっか使いの方々、水たまりの下には何があるかご存じですか」と問いかけ、王には「池の水を抜き取るよう命じて下さい、すると水底には空洞になった石が二つあって、その中に竜が眠っているでしょう」と言った。

　言われた通り、水を抜くと赤い竜と白い竜が出現して戦いを始めた。

　一時は劣勢と見えた赤い竜は勢いを盛り返してなんとか白い竜を退かせた。驚いているヴォーティガンに、赤い竜はブリトン人で白い竜はサクソン人だと説明する。